トリプシン

トリプシン、タンパク質を分解する作用を持つ酵素で、タンパク質分解酵素、またはプロテイナーゼと呼ばれることが多い。 トリプシンは3つの主要な消化性プロテイナーゼの1つで、他の2つはペプシンとキモトリプシンである。 消化プロセスにおいて、トリプシンは他のプロテイナーゼとともに、食物タンパク質分子を構成するペプチドとアミノ酸に分解する。 トリプシンは、胃で始まった消化の過程を小腸で継続し、弱アルカリ性の環境(pH8程度)で酵素活性を最大にする。 トリプシンは膵臓で不活性型として産生されるが、化学組成と構造がもう一つの主要な膵臓プロテイナーゼであるキモトリプシンと驚くほど類似している。 両酵素の活性部位にはヒスチジンとセリンの残基があり、作用機序も似ているようである。 両者の主な違いは、その特異性にあるようだ。つまり、それぞれが、特定のアミノ酸によってカルボキシル基が供与されたタンパク質分子のペプチド結合に対してのみ活性を持つのである。 トリプシンではアルギニンとリジンが、キモトリプシンではチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシンがこれに該当する。 トリプシンは、タンパク質分解酵素の中で、攻撃する化学結合の数が制限されているという点で、最も差別化された酵素である。 このことは、タンパク質のアミノ酸配列の決定に関心を持つ化学者にとって非常に有効であり、トリプシンはそのような分子の秩序だった明確な切断のための試薬として広く用いられている。